代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第41回 衰退リーダーは、亀のような対応スピードで組織を破壊する。 成長リーダーは、神のような対応スピードで組織を上昇させる。

木村先生、何回指摘しても、忙しいを言い訳にして、やらないんですよ。何かいい方法はありますか?」

新任役員になったSさんから、新規採用した2人の部長の仕事の遅さに対する不満が出てきました。

聞けば、メールの返信が遅いに始まり、部下の質問に対する回答が遅い、顧客に対する第一報が遅い等々 芋づる式に問題点が見えてきました。

「本当にこんなことで、(これまで)実績出してきたのかって、疑っちゃいますよ」入社前の面談でのアピールから、即戦力として採用したはずの中途入社組に対する、不信感が思わず口をついて出てきました。


部下を持たない社員のスピードが遅い場合は、顧客に迷惑をかけない限り、まだ目をつぶることはできます。ところが、リーダーの対応スピードは、看過できません。

こうして書くと、
・優先順位があるはずだ(社内と社外、通常案件とクレーム案件等)
・期限があるものが優先されるはずだ
という反論をする方がいます。

ところが、これまで、対応スピードの遅さを指摘されるリーダーのその根本原因が、優先順位や期限に帰結した事例に 出会ったことはありません。

対応スピードの遅いリーダーは、自分の興味に赴くまま、自分の中のスピード感で、物事を処理していきます。優先順位、期限を吟味した結果ではないのです。


幹部には社員から次々に相談、質問が持ち込まれてきます。社員は好き好んでそれをするわけではありません。自分で決められないから、仕方なく幹部にお伺いを立て、相談するのです。

ちょっと想像してみてください。

社員が幹部に質問をします。すると、幹部は、「わかった、ちょっと考えてみる」または「○○さんにも確認してから」と答えます。

相談し、質問した社員は、幹部から答えをもらうまで、手が止まります。社員の立場に立てばこれは至極当然のこと。幹部の方針が覆ると思えば、回答をもらうまでは、相談した内容について勝手に前に進めるほうが不自然です。

待てど暮らせど回答がない。そんな場合でも、多くの善良な社員は放置することはありません。あまりに回答が遅い場合は、勇気を振り絞って確認します。

ところが、幹部からは、「あ、ごめん。今日中に回答するから(と言って最低数日は返ってきません。)」とまた回答保留。

「一人の社員が抱える疑問、課題は、一人一つだけしかない。」なら、回答保留もそれほど問題にはなりません。が、そんな企業はありません。業務を進める中で、社員は自分だけでは判断出来ない課題、問題を抱えていきます。仕事を進めるためには、次から次へと幹部に相談し、判断を仰ぎ、対応しなければ、すぐに仕事は滞ります。


衰退リーダーは、躊躇無く、次々と回答を留保します。悪気はないので、組織の中に、どれだけの停滞時間をもたらしているかを顧みることはありません。

停滞時間は、着実に組織を蝕みます。社内外に不信、不満が雪だるま式に膨らんでいくからです。


では、組織の対応スピードは、いつどうやって形作られていくのでしょうか?
「早い」ことがいいのは、誰もが知っていることなのに、なぜ、対応スピードが遅い組織が存在してしまうのでしょうか?

130社以上のコンサルティングを経験してきた経験から、言えることがあります。
それは、組織の対応スピードは、その組織のリーダーの対応スピードに依存していきます。

組織に対応スピードの基準があれば話は別ですが、基準が無い場合は、すべからく、その組織のリーダーの対応スピードの基準こそが、組織の基準になってしまいます。

実際、周りを見渡してみてください。リーダーがぼんやりしているのに、そのリーダーが率いる組織が高速で動くなんてことはあり得ません。その反対に、リーダーがぼんやりしていて、組織がダメになっていく事例は掃いて捨てるほどあります。

例えば、社内の提出期限が守られない事業部。こういう問題が指摘される場合は、その事業部全体が、上から下まで、対応が遅いのです。


企業とのやり取りが始まると、この対応スピードの違いをビンビン感じます。その組織、組織にある、企業文化としての対応スピード。

かつて、薩摩(鹿児島)には、薩摩時間と言われるものがあったそうです。「時間通りが良いこと」という東京の考え方(日本標準?)に慣れた人にとって、約束時間に遅れても全く悪びれない薩摩人にイライラさせられたとか。

全ての企業には、企業独自の薩摩時間ならぬ、○○会社時間があります。組織の成果を変えたいのなら、独自の○○会社時間を改める必要があるのです。

対応スピードが遅い、衰退リーダーを放置することは、御社の組織の生産性を著しく低下させていきます。それを放置した結果は明かです。本来組織で上がるべき成果が上がらず、部下の不満が貯まり、離職率が上がるのです。

この対応スピードの遅さは、衰退企業に共通していること。衰退企業は一時が万事。全てが遅い。でも、この対応時間は、簡単な方法で、早くしていくことが可能です。だから、とにかくもったいない。


成長リーダーの共通点は、対応時間が早いこと。部下からの疑問、質問に、瞬時に答えを出していきます。私が長年お付き合いしている、それぞれの分野の日本一企業は、組織の対応スピードが圧倒的に早いです。しかも、役職が高くなるほど、驚くほど早い。だからこそ、組織全体の対応時間がべらぼうに早くなる のです。


さて、御社は如何でしょうか?

御社の幹部社員の対応スピードは改善されているでしょうか?
それとも、それは放置され、対応スピードの遅さが組織を蝕んでいるのでしょうか?