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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第40回 衰退リーダーは、業務知識量に胡座をかいて失速する  成長リーダーは、知識に加えて感性を磨いて上昇する

「木村先生、内の若い連中がこんなこと言ってたんですよ。」とある会社の取締役の方が、個別面談の冒頭で会社の懇親会の場で遭遇した残念なことを報告してくれました。

聞けば、会社の新しい方針を説明した後の懇親会の場で、入社3-4年目が固まっているテーブルの横を通りかかった際に、
「どうせ、この会社には将来ないよ。市場が縮小してるんだから」
という言葉を聞いてしまったのだと。

「これだけ苦労して(新しい制度)の導入をしてきたのに、もどかしいですよ。」
とため息交じりにおしゃっり、肩を落としていました。

この話には後日談があります。
この取締役が話題にした3-4年目の人たちと直接話す機会があったので、会社の将来に対する思いを聞いてみました。

彼らの口から出てきた言葉は、「市場の将来」を悲観する話ではありませんでした。彼らが問題にしていたのは、自分たちからすると「能なしに見える幹部」 の存在に対する憤りだったのです。

 


 

大前提として申し上げることがあります。

幹部の仕事の重要性、仕事の領域について社会人3-4年のペイペイなんぞに想像できるはずもなく、こうした愚痴や、憤りなど、本来は知ったことではありません。ですから、こうした雑音は、本来 放置していても全く問題がないことです。

むしろ、もし業務時間中にそんな話をしてるのならば、「それを考えるのは君たちの仕事ではない」とはっきりと注意すべき類いのこと。

これが大前提です。

 

ところが、この会社にはこのことを放置できない事情がありました。

その事情とは、若者の離職問題。傍からみても、深刻な局面にありました。新卒社員が3-4年で辞めていき、次代を担う30代のリーダーが不足する事態になっていたのです。

中長期の会社運営を考えると、永続性に疑問符がついてしまう。
社長の危機感は相当なものでした。

 


 

この会社の社長の悩みは、多くの中小企業の経営者が共通して抱える悩みの一つ。

社長にしてみれば、幹部のみならず、社歴の長い社員が、社長同等とはいかないまでも、貪欲に成長して、自分の仕事の領域をどんどん広げて欲しいと望んでいます。

ところが、現実に目を向け、幹部、社歴の長いリーダーの動きをみると、明らかに成長しているとは言い難い人のほうが圧倒的多数、、、という目を覆うような状況なのです。

 


 

このように成長スピードが鈍化し、停滞状態に陥る、衰退リーダーが陥りがちな罠があります。

それは、

「知識量に安住してしまう」

という罠です。

・長くその業界にいる
・長くその会社にいる
・長くその業務に携わっている
・幅広い知識を持っている
・会社の中ではある分野でNO1の専門家である
等々

知識量がその人のステータスになってくると、知識量の少ない人たちからすると特別な存在として認知されたり、上下左右から頼りにされたり、ということが起こります。

人は易きに流れる動物。

社歴が長い人が全員とは言いませんが、多くの企業で問題となっている衰退幹部、衰退リーダーは、見つけた知識量だけに、自らの存在価値を見出し、それに胡座をかいてしまいます。

知識が悪いわけではありません。
知識はもちろんあったほうがいいのです。

ただ、知識は陳腐化しやすい。一番真似されやすいものでもあります。知識量だけで勝負しようとするなら、そのアップデートするだけでも、相当の労力が必要とされるはずです。

知識のブラッシュアップ、知識領域の拡大に心底努力をしている幹部、リーダーがいるなら、馬鹿にされるどころか、寧ろ尊敬されることでしょう。

ところが、多くの場合、そうはならず、過去に得た知識量、それによって無意味に引き上げられた社内における影響力に胡座をかき、侮蔑の対象となるのです。

 


 

ことこうした衰退リーダーが陥りがちな知識の罠に関しては、しっかりと検証が必要です。
なぜなら、幹部やリーダーが知識量で勝負し続けるというのは、現実的ではないからです。

事例を挙げましょう。

知識を売りにする士業業界で、一人当たりのコンサルティング報酬では、日本トップクラスの税理士の方々に話を聞いたことがあります。

その彼らが口を揃えていった言葉がとても印象に残っています。

「最新の税務知識、最新の制度の変更点の詳しい知識は、税理士なり立ての若い人にはかなわない」

法律にのっとって適正な処理をしなけれいけないのが士業の機能ですが、日本トップクラスの売り上げを上げる人たちは、知識をよりどころにしてはいなかったのです。

彼らに言わせれば、知識を知っている人は世の中に沢山いる。それは聞けばいいことであって、自らが全部知っている必要はないという認識でした。

自分で全てを知識を仕入れるのは、記憶力の点からも効率的ではないことを理解してのことです。
彼らは、自分以外の人が出来ることではなく、自分しかできない領域に特化していたから、日本トップクラスになったのでした。

 


 

成長幹部、成長リーダーは、知識の深さ、広さや、詳細にわたって技術に精通することよりも、自らの感性を磨くこと力を入れる人たちです。

専門知識の習得に血眼になるのではなく、知識を如何に使うかを考えることに時間とエネルギーを傾けます。

知識に重きを置く人の一番多い質問は、自分に対しても、他人に対しても、「何?」です。
感性を身に着けた人が問いを発するとき、「何?」ではなく、「なぜ?」に変わります。

だから、感性を磨くリーダーは未経験のことに遭遇してもしなやかに対応できます。
なぜなら、彼らは、単に表面的な状況を把握するのではなく、違いを生む違いを見るからです。

「なぜ?」を常に追い求める姿勢がそうさせるのです。

起こっている問題に対する対処に走り回るのではなく、起こっている問題がなぜ起こるのかを考え、その根本原因に対処するのです。

仕組みを実践するのではなく、仕組みを改善する人になるのです。

 


 

かつて、
部下の育成に苦しみ、試しに採用した新卒も、初年度まったく売上が上がらず、新卒一人当たりの初年度粗利は、マイナス250万円だった企業の経営者に出会いました。

彼は、知識を共有できればうまくいくはずと考え、如何に知識の高い人を育成するかだけに力を入れていました。

コンサルティングを開始してから、 彼は自らがトップセールスとして、動くことを止めました。

起こっている事象に対応は部下に任せ、起こった問題の根本原因を常に探るようになりました。
すると、ビジネスモデルが生まれたのです。

次に、人材育成に力を入れ始めました。
即戦力と言われる中途の採用を全て凍結しました。即戦力の正体は、多くの場合、低戦力であり、短期戦力でしかなかったからです。

彼は、感性が鋭いリーダーを育成することに外部の力を使いながら注力しました。そうして、感性を磨くリーダーの育成に力を入れた結果、、今では、新卒一人当たりの平均粗利2500万円です。

新卒が入ると、一時的に業績には悪影響というのが一般常識。ところが、この会社の常識は違います。新卒が入るほどに、売上も利益も上がるのが、その会社の常識です。しかも、感性を磨いて、現在新卒を育てているリーダーは、7年前に最初の新卒として 会社に入社したあり得ないほど若いリーダーです。

 


 

さて、御社は如何でしょうか?

御社の幹部社員は業務知識の深さの感性を磨いていますか?
それとも、業務知識の多さ、社歴の長さに安心して成長が止まっていますか?