代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第44回 衰退リーダーは社員を論破しねじ伏せる  成長リーダーは社員に話させ自ら取り組ませる

「木村先生、無駄なエネルギーを使ってました」 といつも以上に興奮気味に話される企業のY取締役。

Y取締役曰く、「まさに、無駄な所に一生懸命エネルギーを使っていた。だから、正直なところ、部長連中との面談もつらくてたまらなかった んですよ」と、本音を吐露されました。

Y取締役の部門には、創業以来のメンバーが多くいます。 そのため、そのメンバー達の個性も強く、「社長の言うことなら聞くが、、、」 等と言ってはばからない者もいました。

それだけなら、まだ大目に見れるところですが、、
昔ながらの慣れた方式に固執し、新しいやり方へ露骨に嫌な顔をしたり、業績が振るわなくても、何かと言い訳を繰り返すようなこともあると、さすがに放置できません。

Y取締役もまた、創業期から携わっているものの、自分より目上、自分よりも、多少先輩筋に当るメンバーを束ねるために、人知れず苦労していたのでした。


経営者の方々から、「この役員、幹部が心配なので、一度話してみてもらえないだろうか。」という相談をよく受けます。

そして、実際に本人とお会いして、話して、更にその部下の数名とも話す機会を持つと、その幹部と、その幹部の組織、チームの抱える問題が立体的に浮かび上がってきます。

経営者が私に偽りを言うわけではもちろんありません。ですが、経営者からどれだけ話しを聞いても、課題が立体的に明快に 分かることはとても少ないです。
やはり一方からだけの情報の限界なのでしょう。

ところが、本人と話す、その本人の周り、数名と話すと、本質的な問題が誰の、どこにあるのか。そしてまた、その本人が従える組織の課題の、根本的な原因が見えてきたりするのです。

こうしたことを、経営者にフィードバックしますと、経営者自身、思いもしなかったような
課題を発見したり、その役員や、幹部の軌道集積に留まらず、組織全体の軌道修正する必要を感じたり等々波状的な広がりのきっかけになります。


実際に幹部とその幹部の周辺からの聞き取りを行う過程では、困った役員、幹部の対社員のコミュニケーションの問題が浮かび上がります。意図する、意図しない関係なく、結果的に組織の衰退を招いている役員、幹部の コミュニケーションには、共通した型があります。

その一つは、押しつけ型です。

役員、幹部が社員に方針、やり方を説明する場面でも、その直属の部下には、反論の余地はもちろん、意見を言う隙間もありません。

最終結論が、そのまま伝えられ、その実現に向け強烈なプレッシャーがかけられる。と、押しつけ型はこんな感じです。

もちろん、このやり方は推奨されるものではありません。このやり方をすると、短期的にはそこそこの成果を得ることができますが、組織の衰退を徐々に招くことになります。


衰退を招いてしまう役員、幹部に悪気はありません。一方、これ以外のやり方を知らない場合も多いのです。

ですが、彼らは、まるで散歩中につかれた犬の首輪をグイグイ引っ張り、犬が座ったままの 状態で、ズルズルと引っ張られていくがごとく、ものすごい力で社員を動かすのです。

そのエネルギーの投下量は、賞賛に値します。ただ、長続きできるものでもなければ、拡大する組織に対応出来るやり方ではありません。

そして、何よりもこのやり方の致命的な欠点は、依存する社員を知らず知らず大量に養成することになっている点です


前出のY取締役もまさに、かつては押しつけ型で、動かない相手でも、引きずって動かすタイプでした。

個性的な重鎮達を動かすのは、本当に骨が折れていたようで、次第に話すのもおっくうになっていったとのことでした。

そんな時に、私のほうで提供した対話法を学び始めると、刻一刻と状況が変わっていきました。
Y取締役の発言にもあるとおり、社員を目の前にして、力の入れ所がまるで違うのです。

実際に力を込めて押したり、引いたりなんてことは、皆無になります。慣れてくると、ほとんど取締役自身の力はほとんど使わずに、社員が勝手に動き出すということが起こってくるのです。


さて、御社の幹部は如何でしょうか?
御社の幹部は、社員をねじ伏せ従わせていますか?
それとも、社員自らが動くように支援していますか?