代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第38話 衰退組織は 目に見えるものだけを追い求めて縮む 成長組織は 感じるものを浸透させて持続的に伸びる

「お前なんかここに居る必要はない、来月からここに来なくていい。帰れ!」
会議室に響いた社長の声。

毎月の進捗ミーティング中の出来事です。

傍目からすると、絶好調の組織。ところが、中を見て見れば、今にも崩れそうな組織。

売上げが上がっているうちは、それでもなんとか回っていきます。ところが、繰り返しお伝えしているように、外部環境の変化で、業績に変調が訪れると、組織は一気に崩壊します。

売上、利益は、あらゆる組織にとって血肉ですので、これを追求することは至極当然のことです。 しかし、企業にとっての売上、利益を植物に例えるなら、土から上の葉っぱや花や実です。

どれほど葉が生い茂り、花は咲き誇り、実がたわわになっている木も、根が腐った途端、あっという間に立ち枯れてしまいます。

ついつい目に見える花や葉は実にばかり気を取られますが、地中深く根が張っていればこその姿です。目に見える売上、利益だけに注力し、目に見えない根をないがしろにしていると、手痛いしっぺ返しを食らいます。

 


 

衰退リーダーが率いる組織は、目に見える売上げ、利益だけをひたすら追求していきます。 衰退リーダーにとっては、目に見えるものだけが頼り。この方式でも確かに数年は、売上げも上がる。しかしこの状態は長くは続きません。根が強くなっていないからです。

植物で根が腐るという現象は、企業でいうなら、人の問題に現れます。

例えば、世が好景気の時は退職者が増える。景気が悪くなると転職先がないので、退職者は増えませんが、その代わり、組織から活気が失われていきます。社員の目から光が消え、死んだような目をして働いている社員が増えていくのです。

衰退リーダーからすると、
「こんなに機会がある企業なのに。なんで辞めていくのだろう」
「なんで、もっと積極的に関わってこないのだろう。いくらでもチャンスがあるのに」
「転職したって、うちほど恵まれた環境なんかあるわけがない」
と、なぜ社員が辞めるのか?なぜ目が死んだような社員がどうしてそうなってしまうのか?全く理解できないという状況が起こります。

見えるものだけを追いかけているリーダーからすると、見えないものは、不必要なもの。だから、その原因にも、見えるもの以外は思い浮かばないのです。

社員が組織からこぼれていくことは、あらゆる業種、業態にとって、機会損失につながります。 数年単位で考えるなら、ざっと計算して数億円の損失なんてザラにあります。

目から光りが消えた社員の増加も、同様です。機会損失を生み出していきます。顧客は馬鹿ではありません。死んだような目をした社員ばかりの雰囲気の悪い企業とつきあいたい顧客などいないからです。

表だっては文句を言わないかもしれません、ただ、満足していなから去っていくのです。
不満を言われないからといって看過してはなりません。

経営者からすると歯がゆいことこの上ないことです。しかし大変残念なことに、こうした衰退リーダーが自らの非に気がつき態度を改めることは、ほとんどありません。時が解決するというのは幻想です。放っておいても状況は悪化する一方です。

寧ろ衰退リーダーが本質的な問題に気がつくまで、新たな機会損失が生まれ続け、莫大な損失を作り上げてしまいます。こうした衰退リーダーについては、早めの対処が必要です。

 


 

成長リーダーの率いる組織は、目に見える売上げ、利益ももちろん追求します。それと同時に、社員一人一人の働く目的、仕事の目的といった目に見えない部分についても、しっかりと「根付かせて」いきます。

働く目的、仕事の目的は、リーダーが社員に一方的に伝えるだけでは、社員にそれが定着することはありません。社員自身に考えてもらわなくてはならないのです。それも、一度ではなく、何度も何度も繰り返し働きかけ、考えてもらう。

息を吸い、息を吐くことを私達は常に意識してはいません。ほとんどの場合は無意識に行います。 働く目的、仕事の目的も同じで、無意識レベルにまで落とし込むことが理想の状態。

私達が日頃意識せずとも息を吸い、息を吐くように、当たり前のように働く目的、仕事の目的にそうように社員が動くなら、顧客はそれを敏感に感じるようになります。

想像してもらうとお分かりのように、今日の明日で実現できることではありません。手間が掛かります。植物の根を強く太くすることも、手間がかかります。が、その見返りは大きい。根が地中深くはり巡らされた植物は、乾きに耐え、風雨にも強い。かけた手間分だけ、多くの花と果実を手にすることができます。

今年だけではありません。この先、5年10年、毎年毎年、実がなるのです。

目に見える部分だけを訴求する衰退リーダーにしてみれば、目に見えない地中の根の世話などムダだと感じることでしょう。しかし、成長リーダーは、持続的な成長を実現するために、何に手間をかけるべきことが分かっています。

そして、社員にそれを「根付かせる」ための技術を持っていれば、何か特別なことをするという意識ではなく、仕組みを実践することで、時が経つほどに、社員に浸透させることができるのです。

成長リーダーに素質は必要ありません。マネジメント未経験のリーダーに、仕組みを与え、技術を提供することで、誰しもが、成長リーダーになり、成長組織を作り上げることができるのです

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さて、御社は如何でしょうか?

多少の環境変化にびくともしない丈夫な根は育っているでしょうか?
社員の中に確固とした働く目的、仕事の目的は根付いているでしょうか?