代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第23話 衰退組織には、冷たい優しさがある 成長組織には、厳しい暖かさがある

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ある地域で圧倒的な成功をしている企業をご支援したことがあります。その地域でも、優良企業とどの経営者も名を上げるような企業でした。

本日も、少々設定を変えてお伝えします。

その経営者から、支店を任せられる人を育成したいので、手伝って欲しいとのお申し出をいただいたのです。

現状を確認すると、外から見える成功とは、少し違う事情があることがわかりました。

大成功していると言われる外見とは裏腹に、経営者の孤軍奮闘がありました。

全てを強靱な精神力と体力を併せ持った経営者が一人で支えていたのです。経営者が支店を飛び回り、支店の売上げを維持していたのでした。

ただ、そのやり方では、今が限界であるということは、社長ご本人が承知されて いました。
「これからも、更に大きく広げていきたいので、それぞれの支店長を一人前にしたい」というご要望。


 

最初にお会いした支店長は、とても温厚な30中盤の男性。社長の事前情報では、社長の悩みの種の御仁。

社長曰く、”その支店長に一度任せてみたものの、売上げは、一本調子で下がっている。 解せないのは、本人はそのことに詫びるでもなく、臆するでもなく、ケロっとしている(ようにみえる)。”と。

社長としても、あの手、この手で、その支店長をサポートしているとのことでした。

”具体的に数字の話を持ち出すと、急に神妙な面持ちになり、大変反省しているように見えるのだが、、、”と頭を捻ったままの社長が、ソファーに更に沈んでいくように見えました。


 

詳しくお話を聞けば、社長が不安がるのも無理ないなと思えてきました。

その支店長から赴任する前からいた社員が次々と辞め始めていたのです。社長が手塩にかけたベテラン社員が次々と辞めるのは身を切られるようなつらさだと いつも朗らかなお顔を強ばらせて話してくれました。

その支店のスタッフから、社長のところに、漏れ聞こえてくる声は、
「支店長は優柔不断で、聞いても答えが返ってこない。」
「ここで働いていても、もう面白くない」 といったもの。

社長曰く、何度も考えたそうです。「支店長を取るか、スタッフと取るか、、、」

散々逡巡した挙げ句、支店長の組織を作らなければ、会社の将来もないし、支店長の成長もないという苦渋の決断をしたとのこと。

迷いながらも、社長は、支店長に任せることに決めました。そして、「支店長が、組織を作る力を教えて欲しい」と依頼されてきたのでした。


 

支店長は、それまでマネジメント経験がなかったものの、人柄を買われてその職に ついた人でした。

リーダーは、一番賢くも、一番強くもなくてもいいのですが、一番最後に決める人です。 決断力のない人の温厚さは、組織にとて悲劇を招きます。

本来は、叱らないといけない場面でも、ただ、優しく接する。 どんな時でも優しく接するのです。

何が良くて、何がダメなのか、経験値のないスタッフなら、勘違いしそうです。 いえ、事実そういう社員も出始めてきていました。

不届きな態度を取る社員を野放しにする支店長に対して、ベテラン社員の不満は高まる 一方でした。

支店長にこの状況について問いただすと、本人もこのままではいけないと思いながらも、 やり方がわからないというのです。

更に、聞いていくと、本人は人が自分から離れていくことが不安でたまらない。それを避けるために甘く接してしまうとの弁。

一言で言えば、嫌われたくない リーダーです。

かつて私自身もそうでした。この仕事をして多くの会社のリーダーに出会って分かったのですが、こういうダメリーダーは、驚くほど多く生息しています。
嫌われたくないリーダーとは、組織よりも、他人よりも、自分が大事な人達。

言うべきことを言えないのです。

厳しく言った時に、一瞬、相手の顔がゆがむ。あの一瞬が嫌でたまらない。
厳しく言った時に、一瞬、相手が見せる恨みの目。あの一瞬がたまらない。

相手の一瞬の表情に屈してしまう。

相手を不快にさせないし、自分もその不快に巻き込まれて、不快になりたくない。

こうなると、 緊張する場面はとにかく避けるようになります。だから、いつも温厚です。

一見、とても温厚。
一見、とても優しい。

でも、これはあくまで表面的なもの。事実は、己が一番かわいいだけ。部下のことなんかしったことではないのです。 見せかけの優しさは、他人への冷たさ故です。


 

一方、成長組織のリーダーは違います。
部下のことをとても大切に思っていますが、それは、変な優しさで表されることはありません。

 

寧ろ、厳しい。

 

成果を出すことを厳しく迫っていくのが成長組織のリーダーです。それば、部下の成長を促進するために必要なことだと心得ているのです。ですから、部下の一瞬の表情に屈することはありません。

目の前の不快な状況よりも、その先にある部下の成長をしっかりと見据えているのです。

部下のことを本当に思いやるなら、部下の成長を後押しすることが何よりも求められていること。

これを成長組織のリーダー知って、実行しています。

 

さて、

あなたの組織の経営幹部、リーダーの方々は如何でしょうか?

部下の成長を思いやり厳しく接することができているでしょうか?
それとも、表面的な冷たい優しさで接しているのでしょうか?